コラム

2016.02.25

人は、歯に潜む「魔物」から逃れられない

こんにちは、歯科医師の南です。

 

アメリカのビジネスパーソンが歯のケアにこだわりを持つのは、美しさを保つことで周囲の人々や商談相手に不快感を与えないという理由とともに、歯が壊れることで被る恐ろしい害を熟知していることも挙げられるでしょう。

 

まず、一番の根本的な問題点として、

「歯の病気が発症したら、放置して自然に治癒することは絶対にない」

その事実を心に留めておかなければなりません。

 

一度、病気になると元の状態には戻らないのです。

虫歯の場合、痛みを取り、一時的に進行をストップさせたりすることはできますが、歯の一部は失われますし、穴が開いてしまいます。

決して元通りにはなりません。

歯周病の場合はさらに深刻で、歯ぐきや歯ぐきの下の骨が侵されてしまうのです。

 

しかも、進行をストップさせても、将来その治療箇所がさらに大きな問題に発展してしまう危険性も潜んでいます。

 

欧米の人たちはその恐ろしさを親や教育の現場で教え込まれています。

 

もう一つ、皆さんも実感してもらえる問題として、

「歯の病気はだれでも発症率が100%」

虫歯や歯周病に一生かからないですむ人は非常にまれですし、子どもから高齢者までまんべんなく発症します。

 

実は、虫歯とか歯周病というのは「感染症」の一つなのです。

虫歯や歯周病菌が人から人へうつって引き起こす病気だと理解してください。

 

たとえば虫歯は虫歯菌(ミュータンス菌)の感染によって起こります。

生まれたばかりの赤ちゃんの口の中に虫歯菌はいませんが、母親などが口移しで食べ物を与えたり自分の箸やスプーンを使うことによって唾液を通して感染し、そのまま子どもの口の中に菌がすみついてしまうのです。

歯周病菌も同様に人から人へとうつります。

 

少し専門的な話になりますが、ミュータンス菌はグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)という酵素をだし、エサである砂糖を粘り気のある「グルカン」という物質に変え、それが歯の表面に張り付くのです。

ミュータンス菌は砂糖をエサにするとパワーを増して大量にグルカンを作ります。

 

歯の表面のエナメル質は相当丈夫に出来ているのですが、唯一酸に弱いのです。

ミュータンス菌が出すネバネバしたグルカンは酢と同じぐらいの強い酸で出来ていますので、これが歯にとっては大敵になるのです。

 

生活をする上で細菌感染を完璧に防ぐことは非常に困難なことです。

ゆえに歯の病気は誰もが罹ってしまうのです。

 

この2つの事実から確実に言えることは、

「常に口の中を綺麗にしておくこと」

「感染しても病気が進まないような口内環境を保つこと」

この2つしか脅威から逃れる手はないのです。

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