コラム

2014.01.24

母の虫歯菌、歯周病菌が子どもにうつる

こんにちは。歯科医師の南です。

 

 

実は虫歯・歯周病は「うつる」病気です。

 

虫歯菌・歯周病菌の受け渡しがあれば、「感染=うつる」が成立します。お口の細菌は唾液に混じっており、感染の媒体として唾液が重要です。

唾液は無色透明で一見きれいな液体ですが、実は1ml中に1億個(!)もの細菌を含む立派な感染源なのです(例えば牛乳ビン200mlで200億個ですね)。

 

 

ここで大切なのは、人から人への感染経路で最も多いのが「親から子へ」。

 

 

 

 

 

 

中でも、一緒に過ごす時間が多い「お母さんから子へ」が重要です。

例えば、赤ちゃんの食事でお箸・スプーンなどを共有したり、可愛さのあまり口付けしたり、顔を近付けて会話をしたりするなど、ごくありふれた日常のスキンシップの中で、唾液を介して感染の可能性があるのです。

実際、親子から同じ菌の遺伝子が検出されたとの報告も多数認められます。

「子どものお口の健康は、親次第」なのです。

 

 

虫歯菌の代表・ミュータンス菌は、ネバネバの粘着物質で歯の表面に粘着しますので、赤ちゃんの歯が生え始める生後6カ月頃から歯の表面に定着し始めます。

定着年齢は虫歯菌よりは遅れますが、歯周病菌も同様に感染します。

 

 

特に生後19~31カ月の期間は乳歯が生えそろってきて、ミュータンス菌が最も感染しやすい時期であるため「window of infectivity(感染の窓)」という、特別な呼び方をして、注意を呼び掛けています。

 

 

また、歯周病菌の多くは嫌気性菌といって、酸素がない状態を好む菌ですので、乳歯のように構造がシンプル(永久歯の歯周ポケットのような深いミゾが少ない)な場合、虫歯菌よりは感染時期は遅れますが、それでも乳歯の時期に感染は始まるとも言われています。

子どもでは、特に「若年性歯周炎」という特殊な歯周炎があり、それを引き起こす歯周病菌も確認されています(A.actinomycetemcomitans)。

 

 

もし仮に子どもの口に細菌が入っても、大半は唾液と一緒に飲み込まれ咽頭・食道を経て胃の強酸で死滅しますし、適度なスキンシップ後に歯磨きをきちんとすれば、感染の確率は減ります。

また、お母さんが普段からお口を清潔に心掛けることも感染のリスク減少につながります。

ですから、日常生活の注意点として「菌をうつさない、うつらない」という意識が大切なのです。

 

 

また、できればせめて子どもが小学校の低学年までは仕上げ磨きをして下さい。

それと同時に、正しい歯磨きを子どもが一人でできるように教えて下さい。

一人で磨くようになって、虫歯だらけになってしまうと、それまでの努力が本当に水の泡です。

 

 

将来のために私たち大人は、次の世代の子どもたちに自分の菌をうつさない大きな責任があると言っても過言ではないと思います。

じゃあまずは、自分自身のお口を清潔に。

今夜も、くつろぎタイムに「スロー・ブラッシング」で快適な“健口生活”を!!

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